韓国語学習者なら誰でも一度は「発音」の壁にぶつかったことがあるのではないでしょうか?
日本語より複雑な母音や、激音・濃音、パッチムなど、日本人にとっては発音したり聞き取ったりしにくい要素が韓国語にはたくさんあります。
今回は、そんなお悩みを持つ方に絶対読んでほしい書籍『ネイティブっぽい韓国語の発音』についてご紹介したいと思います。
『ネイティブっぽい韓国語の発音』書籍紹介
『ネイティブっぽい韓国語の発音』稲川右樹 著・イラスト
2019年 株式会社HANA
韓国語学習者なら誰もがつまずく韓国語の発音。
なぜ発音が難しく感じるのかを分かりやすく分析し、正しく発音するコツを紹介し、どうしたら「ネイティブっぽい」話し方に近づけるかを追求した1冊です。
「発音の基礎」から「プラスアルファ」まで
この本は【入門編】【発展編】の2つの章から成り立っています。
入門編は、韓国語の母音・子音・パッチムといったハングルの基本的な要素や、韓国語特有の激音・濃音・発音変化などについての章です。
このあたりについては韓国語学習者が初級の段階で習う内容ですが、何度説明を受けたり練習してもうまくいかないという人も多いと思います。
そんな人たちが改めて復習できるように、発音のしくみを詳しく突き詰めて説明しています。
また、これから学習を始める人にとっても分かりやすい内容です。
発展編は、そういった基本的な発音からさらに進歩した内容で、「発音がいい外国人」を脱して、「ネイティブっぽい」に近づくための内容です。
「アクセント」「イントネーション」「リズム」の3つの観点から、どうすれば「日本人っぽい話し方」を捨てられるのか、韓国語にはどういった特徴があるのかを豊富な例文とともに説明しています。
CDと例文付きで分かりやすい
文章だけを読んでいても、実際の発音を聞かないとイメージしづらいですよね。
この本には、ちゃんと音声データCDが付属されています。
単語や例文を実際に音声で聞くことができるので、とてもわかりやすいです。
また、著者本人による挿絵も多く読みやすいです。
口の中の動きをわかりやすく図解したものや、かわいいキャラクター(?)による説明も登場するので、文章で理解するよりもイメージが湧きやすいです!
『ネイティブっぽい韓国語の発音』を読んだ感想
私は最初は独学で韓国語をスタートしたので、発音に関しては本当に正解も分からず「ひとりでつぶやいてるだけ」でした。
会話教室に通い始めてある程度韓国語で日常会話ができるようになると、「もっと上手に話したい」という気持ちが芽生え、韓国語の発音を勉強しよう!と思ってこの本を手に取りました。
読み終わった感想としては……正直、ここまで韓国語の発音を突き詰めて、その上わかりやすく説明している書籍はないんじゃないかと思います。
濃音は「っ」を頭につける!とか、「오」は口をすぼめた状態で「オ」を発音する!とか、今までさんざん見てきた説明のレベルを遥かに超えて、言語と発音、そしてそれに対する人間の認知力について深く考察したうえでの解説がなされている本です。
個人的に私が目から鱗だったのは、「母音はグラデーション」だということです。
たとえば日本語の母音は「あいうえお」の5種類ですが、実際には、口の形を微妙に変えることで母音は無限に存在します。
その無限の音たちを、「この音からこの音までを『あ』ということにしよう」と脳が決めた結果、「あいうえお」の5つの母音が生まれたということです。
そしてその「この音からこの音まで」という基準は言語によって違います。
日本語より韓国語の方がその区分を細かく行っているので、結果として日本語より多くの種類の母音が存在しているということです。
たとえば、韓国語では「オ」は「오」と「어」の2種類あるというような言い方がよくされますよね。(ウも同様)
でもそういう風に日本語と韓国語を対応させるんじゃなくて、本当は韓国語の母音はそもそも日本語の母音とは切り離して考えるべきなんじゃないかなということに気がつきました。
実際私は、「오」と「어」の言い分けが苦手だったんですよね。
実は今まで私は、「『어』は日本語の『オ』を『ア』に近づけた感じ」という意識があり、「『오』は『オ』で、『어』は『ア寄りのオ』」という風に考えて発音していました。
つまり、「오」を発音するときはそこまで意識をせず、「어」だけに気をつけて発音していました。
が、この本に書かれていたある内容を見て引っかかったんです。
それは、日本人の中にも日本語の「オ」を「오」っぽく発音する人もいれば「어」っぽく発音する人もいるということです。
私にとっての日本語「オ」は「오」ではなく「어」の方に近かったということにそのとき初めて気がつきました。
つまり、私が本当に強く意識しなければいけなかったのは、「오」の方だったんです。
それが分かった瞬間、「오」と「어」の言い分けについて急にスッキリと腑に落ちました。
それ以来、明らかに自分の「오」の発音が変わったなという自覚があります。
私の韓国語の発音はまだまだですが、「오」と「어」に関しては、この本のおかげでほぼマスターできたのではないか自信を持って言えます!
この例文、CDで初めて聞いたときは「はぁ???」となりました。
全部一緒に聞こえました。笑
でもこの音声だけを何十回もくりかえして再生しているうちに、だんだん聞き分けられるようになってくるんですよ。
発音ができるようになると聞き取りの能力も伸びるんだと思います。
あとは、やっぱり発展編の「アクセント」「イントネーション」「リズム」についての説明が本当に興味深い。
これについては、ここではとても書ききれないくらい本当に細かいところまで掘り下げています。
一歩進んだ内容なので、正直今の私には、すべてを完璧に理解して意識しながら話すのはまだ無理です。
ただ、「韓国語にはこういうイントネーションの特徴があるんだな」とか、「こういうアクセントにすればニュアンスが変わるんだな」とか、頭の片隅に入れておくだけでも、普段の会話に生かすことができているように思います。
「まだ発音が完璧ではない」「まだスラスラ話せるようになってもいない」という段階の人であっても、一度読んで知っておくだけでも絶対に役に立つと思います!何より面白い!
『ネイティブっぽい韓国語の発音』は、「発音のコツ」というライトな内容にとどまらず、「なぜそうなるのか?どういう仕組みなのか?」というところまで掘り下げたうえで、分かりやすく説明した本当に素晴らしい書籍でした。
韓国語の発音が上達するヒントを得られるだけでなく、「言語を話すこと」の奥深さを知ることができたり、何気なく話している日本語の特性についても改めて考えさせられる内容です。
レベルの高い難しい内容ではありますが、韓国語学習者の目線に立って学習者の悩みに寄り添ってくれるとっても丁寧な説明は読んでいて飽きません。
韓国語の発音がうまくできなくて悩んでいる方や、もっと高いレベルを目指したいという方は、絶対に絶対にこの本を買った方がいいです!